【小説講座1-1】描写、それは世界を立ちあがらせる、小説家の使命

この記事を3行でまとめると

小説の特殊技能・「描写」の必要性について

ひたすら実践的に解説してみる

【ことそこ!小説講座】第1弾その1、っておはなし。

リクエスト感謝!

※筆者についてはプロフィールページご参照くださいませ~



小説家には特殊技能「描写」が必要である。

前提:小説は「会話」「説明」「描写」の3要素で形成される

説明と会話だけの文章媒体は

シナリオです。

ぜんぶ説明体に近い文章で、まるで百科事典のようなのに

おもしろいホルヘ・ルイス・ボルヘスみたいな例外もおりますが。

最近の小説を拝覧するに

履歴書みたいなものや、設定集のようなものが

出回っておりますが(古典厨ですが一応がんばって読むときは読んでいます)

よほど書かれている内容や物語が

奇抜でおもしろくないかぎり、

説明体だけの小説は、小説にはなりえません。脚本です。

作品世界を立ちあがらせる職人技――「描写」

小説家に課せられた至上命令「世界を立ちあがらせること」

読者は白紙の状態から、

作者の提示する世界を脳内で構築していきます。

そのうえで必要なのが、「情報」

あたえられる情報がないかぎり、伝わらないのです。

人間ってふしぎなほど、言わないと、わからない。

その情報を伝達する方法で

小説家の職人技となってくるのが

「描写」となります。

たとえば、こんな感じ――

徳永はうれしそうにした。

これは、説明文

では描写はどうか。

 徳永は顔をあからめ、肩をゆらして笑った。

どんな光景うかんできましたか?

状況伝達ではない。

その景色、音、空気を現出させる。

これが描写の力です。

ちなみに

「世界を立ちあがらせ」た作品で傑作といえるのが

『ハリー・ポッター』シリーズです。

なぜかわかる、バタービールや蛙チョコレートの味。

「削る美」と「描写過少」の混同

『錦繍』などで著名な宮本輝先生に

有名なエピソードがあります。

気に入っている冒頭部を

師匠に見せに行ったところ、そこをバッサリ削られた。

若き宮本輝先生、当然、激怒。

しかし冷静に見てみると

その「気に入っていた冒頭部」を

削ったほうがずっとスッキリしてよくなった……

これは描写過剰・書き込み過剰になった場合のことであって

伝達事項が不足したままで「削る」作業をすると

悲惨なことになります。

「削る美」を語りたいなら

とりあえずヘミングウェイを読みましょう。

それと「データを隠してストーリーテリングする」のは

少なくとも中級者のやることになります。

むずかしいです。

……まあ、そんなこんなで。

リクエストを受けてはじめました

ひたすらに実践的な小説講座――

ことそこ!小説講座

記念すべき第1回は

「描写で世界・空間を立ちあがらせる技能」たる

描写について語ろうと思います。

というところで、次回につづく!

次回は、

描写!中級編「季節感と情緒を出す」でございます。

近いうちに更新予定。小出しにいきますね。

ではまたネットの海で。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. 有沢翔治 より:

    こちらでは初めまして。読書メーターではお世話になっております。
    ご存知かどうかは解りませんが、僕も小説は書いてます。

    「説明文」と呼ばれる文章と「描写」とでは、具体性が違うのではないかと思っています。例えば
    「徳永はうれしそうにした。」
    というのは、具体的にどういう顔、ないしは仕草なのかが解らない。
    せめて「徳永はうれしそうに笑った」くらいは欲しいな、と。
    ……とまぁ、これでは芸がないので、「うれしさ」を笑う、と言う語彙以外で表現してみました。
    勝手に由紀子を登場させて、日野さんがご想像されているのとは多分かなり状況も違うでしょうが、思いついたものは書かないと気がすまない。書いたものは発表しないと気がすまない性格なので……^^;。

     徳永は目を伏せると、ぽつりぽつりと語り始めた。しかし、緊張のあまり声が出ない。ようやく由紀子にも聞き取れた。
     由紀子は最後の一言を聞いて、ハッと顔を上げる。顔が赤いのは夕日に照らされているからだけではない。彼女はゆっくりと頷くと、徳永に肩を寄せる。
     春の訪れ。それを風の匂いが告げていた。

     お目汚し失礼しました!

    • hinon より:

      有沢さん、いつも読書メーターでお世話になってます!こちらでもお目にかかれて嬉しいです。
      小説書かれるのですね!難しくも魅力的な作業ですよね、私もいっしょに精進できればと思いますm(_ _)m

      おっしゃる通りたしかに「説明文」と「描写」では具体性がとても異なりますね。
      私はそれに加えて、「説明文」と「描写」はそもそも性質がまったく違うと私は思っています。
      説明は事務的な情報伝達、描写は「描き出す」という芸術的行為です。
      有沢さんがおっしゃるように「芸がない」それが説明文のみの「小説」(シナリオ)だと思っています。
      とはいえホルヘ・ルイス・ボルヘスなどのように、全編説明文みたいなくせに世界が全部立ちあがってくるというチートもいるので、一概には言えません^^;

      文章もお寄せいただきありがとうございます!
      まだまだ進化できますね!
      というのも、描写に加えて「空間の具体性」をもっと描けると感じたからです。

      たとえば「風の匂い」ですが、ここももっと描いちゃっていいと思います。
      「由紀子のぬくもりを慄える体に感じていると、寒い風に匂いがついているのに気づく。境内で咲く梅の花の甘い香が運ばれてきているのだ。春が訪れた」
      僭越ながら筆を入れさせていただきました。いかがでしょう?
      ご参考までに……!

      これからもがんばりますね、どうぞこれからもよろしくお願いいたします!